2026年9月12日 - すべて
JOURNAL暮らしをつくる計画
NOSTALGIC DINER
TGFとオーナーの暮らしが
交わった、味のある家。
オーナーご夫婦と初めてお会いしたのは、2022年の初夏。その年の4月に開いた前橋市江木町のモデルハウス1号棟を、見に来てくださったのが最初。その頃はまだ「いつか家を建てられたらいいな」くらいの温度だったと思います。
それから一年半ほど経った2023年の年末。江木町のモデルハウスをベースに建てた足門町の平屋、その完成見学会でまたお会いしました。そこから土地の情報をお送りするようになって、家づくりが本格的に動き出したのが2024年6月。
探しはじめたのは吉岡町。条件に合いそうな土地を見つけては資料をお送りして、休みの日にご夫婦で見に行ってもらう。気になる土地があれば、僕も一緒に現地を見る。ご紹介した物件は、数十件になったと思います。
いいと思った土地に建築条件が付いていたり、先に申し込みが入っていたり。相場より高くて、交渉の余地がないこともある。決まらない時間は、正直それなりに長かったです。
吉岡町から榛東村、箕郷町へ。少しずつ範囲を広げて、最後に見つかったのが渋川市の土地。とにかく広い。それでいて価格も条件に合っていて、ご主人の職場にも近い。
「渋川でも全然いいっすね」
その一言で、土地が決まる。この家の話が本当に始まったのは、ここからです。
01いつか手に入れるアメ車のためのガレージ。日が落ちてからの表情が、この家はいちばんいい。
ご夫婦が好きなのは、アメリカンカルチャー。古着、アクセサリー、ヴィンテージの椅子や照明、アメトイ。
「人と同じような家にはしたくない」という言葉と、いつか手に入れるアメ車が入るガレージ。好きなものの輪郭が、はじめからはっきりしているご夫婦でした。
打ち合わせの中心はご主人で、奥様はその横で静かに寄り添っている感じ。こちらが少し変わった提案を出しても、
「いいっすね。いいっすね」
と面白がってくれる。ウォークインクローゼットを抜けて寝室へ入る動線、その寝室を小上がりにする構成。たぶん別のご家族だったら、ここまで振り切った案は出していません。
それでいて、無理をしている感じはどこにもない。もともとティーズのモデルハウスやTGFを気に入ってくれていた分、好みの方角が初めから近かったんだと思います。
02玄関を入ってすぐのリビング。右手に大きな観音扉、床はチークのパーケット。ソファはTGFのオリジナル「Ts-5」。
ご夫婦の好きなアメリカンヴィンテージを、そのまま形にするだけじゃない。そこにティーズらしい空気も混ぜたかった。その時に思い出したのが、高崎市八千代町にある昔ながらの喫茶店です。以前に一度行った時の、少し落とした照明、深い木の色、昔からそこにあったような空気。あれがずっと頭に残っていた。
僕もご夫婦も30代。昭和の喫茶店をリアルタイムで知っている世代じゃない。だから、昭和を再現しようとは初めから思っていませんでした。
僕が格好いいと思った古い喫茶店の空気に、ご夫婦のアメリカンヴィンテージ。そこへアメリカの古いダイナーの気配を少しだけ混ぜてみる。この家の面白さは、たぶんそこにあります。
知らない時代を、僕たちなりに
想像してつくった家。
03一枚ずつ表情の違うタイルと、間接照明で照らしたボトル棚。喫茶店でもダイナーでもない、その中間を狙っている。
04カウンターの上には、ご夫婦が選んだヴィンテージのビリヤードランプ。この灯りも、この家の空気をつくっている一つ。
最初の打ち合わせは、旧TGF。2025年の4月に新店舗へ移ってからは、打ち合わせの場所も新しい店になりました。
新しいTGFは、古いアメリカの格式あるホテルをイメージしてつくった店。ラワン合板、チーク色の木部、青い床、カウンター。リビングスペースには、昔の小学校などで使われていたようなパーケットフロアも敷いた。
ご夫婦も、この店をずいぶん気に入ってくれました。テレビ面と天井のラワン、大きな観音扉、チークのパーケット、大型のシーリングファン。
「これ、家にもいいっすね」
そんな話をしているうちに、新しいTGFの要素が家の中へ入っていきました。
ご夫婦のアメリカンカルチャー。TGFのヴィンテージ感。僕の中にあった古い喫茶店。この三つが少しずつ混ざっていく時間が、そのまま打ち合わせだったように思います。
05玄関。ご夫婦が選んだステンドグラスの照明と、造作の観音扉。
06吹き抜けの天井は板張り。高い位置に並べたブラケットで、夜の光を目線より上に置いている。
この家に、一般的なダイニングテーブルはありません。代わりに、リビングから40cm上げたところがダイニング。そこへ大きなカウンターを据えて、座るところは掘りごたつのように足を下ろせる。
そのカウンターの向こう、キッチンの床はさらに低くしてあります。立って料理をしている人と、腰かけている人。目線が自然に近づく高さ。
実はこれ、8年ほど前に建てた僕自身の家でもやっている暮らし方。ダイニングテーブルを置かず、小上がりのカウンターで食事をとる。自分で暮らして気に入っていた形だったので、この家にも提案しました。
背面には、ご主人のアメトイを飾るための大きな造作棚。普通につくろうと思えば、まずこうはならない。ただ、このご夫婦にはこっちの方が似合っていました。
07リビングから40cm上げたダイニングに、大きなカウンター。足はここから下ろせます。
初めてお会いした頃、ご夫婦は二人。引き渡しの日には、生まれたばかりの女の子を抱いています。土地探しから長かったので、なんだか不思議な感じでした。
引き渡しの時点で、ご夫婦が選んだヴィンテージの照明は入っていて、TGFのオリジナルソファ「Ts-5」とオットマンも置かれている。家としては、もう十分いいものができたと思っていました。
それでも、まだこれからだという感じも同時にありました。大きな造作棚には、これからアメトイが並ぶ。ウォークインクローゼットには、集めてきた古着が入る。家具もラグもピクチャーも雑貨も、これから増えていく。
このご夫婦が暮らし始めたら、
絶対にもっと格好よくなる。
引き渡しから約9カ月。改めて撮影させてもらいました。
一番驚いたのが、ウォークインクローゼット。引き渡しの日にはまだ余白のあった棚に古着がびっしり並んで、ラグや小物が入って、本当にセンスのいい古着屋みたいになっていました。
面白かったのは、Ts-5と一緒に納めたオットマン。リビングで使うものだと思い込んでいたら、ウォークインクローゼットへ移っていました。これが驚くほど似合っている。最初からこの部屋のために選んだみたい。
2025.08引き渡し時
2026.05約9カ月後
08棚もパイプも、引き渡しの日のまま。中央のオットマンは、リビングからここへ移ってきたものです。
建築は、何も変わっていない。
変わったのは、暮らしだけ。
2025.08引き渡し時
2026.05約9カ月後
09カウンター背面の造作棚。マス目の大小は、わざと不揃い。ご主人が集めてきたアメトイが、ちょうどいい密度で並んでいました。
玄関に入れば、ヴィンテージの照明、ピクチャー、ラグ。僕たちがつくった建築に、ご夫婦の好きなものが入って、ちゃんとこの家の一部になっていました。
「やっぱり、このご夫婦すごいな」
素直に、そう思いました。
10洗面。八角のミラーに合わせて、金物は真鍮で統一。ここにも小さなフィギュアが増えていました。
この家を「ノスタルジックダイナー」と呼ぶようになったのは、実は工事をしている時ではない。暮らしの始まった家を改めて見て、撮影した写真を見返した時に、この言葉が浮かびました。
アメリカンヴィンテージ。古い喫茶店。アメリカのダイナー。TGF。そして、ご夫婦の暮らし。そのどれか一つでもない。僕たちの知らない時代の格好良さを、自分たちなりに解釈してつくった空間に、ご夫婦の好きなものと日々が重なっている。だから「昭和レトロ」だけでも、「アメリカンヴィンテージ」だけでもない。今のこの家には、この言葉が一番しっくりきます。
僕たちにできるのは、引き渡しの日までに最大限、格好いい家をつくること。でも、そこで全部が完成するわけじゃない。家具が入り、服が掛かり、好きなものが増える。子どもが大きくなって、ご家族の時間も重なっていく。そうやって建築に、暮らしという味が加わっていきます。
引き渡しの時も好きだったけれど、今の方がこの家らしい。9カ月ぶんの渋みが、そのまま出ていました。そして、これからもっと渋くなる。
NOSTALGIC DINER
TGFとオーナーの暮らしが交わった、
味のある家。
いつかガレージに、あの車が入ったら。
その時は、また撮影させてください。
WORKS竣工時の写真は「アメリカンビンテージ×昭和レトロ。記憶に残る“エモい”を住みこなす家」でご覧いただけます。
ABOUT T’S ALL WORKS
家具から考える、家づくり。
T’s Garage Furnitureには、ソファも照明もヴィンテージの家具も並んでいます。家の話だけではなく、どんなものが好きかから一緒に考える。ティーズの家づくりは、いつもそこから始まります。
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