カバードポーチから家具、照明、音楽まで。
暮らしの風景を一棟まるごと考えた、2022年の販売型モデルハウス。
群馬県前橋市江木町。
2022年に建てた、販売型モデルハウスです。
上毛新聞社が主催する住宅展示場に、群馬県内の工務店およそ14社が参加しました。
各社に与えられた共通テーマは、「間のある家」。
ティーズが考えた「間」は、家の中にもう一部屋をつくることではありませんでした。
駐車場と家の間。
外と中の間。
その境界に、カバードポーチをつくりました。
そしてもうひとつ、決めていたテーマがあります。
「コーヒーと音楽の似合う家。」
昭和の喫茶店。
1970年代のアメリカ。
少し懐かしい空気を思い浮かべながら、建物だけでなく、家具、照明、雑貨、音楽まで含めて、一棟の住まいを考えました。

01|外と中の「間」をつくる、カバードポーチ。
アメリカの住宅で古くから見られるカバードポーチ。
深い軒が日差しと雨を遮り、屋外にいながら過ごせる半屋外の場所です。
私たちは、ここを外観のデザインで終わらせませんでした。
この家のテーマである「間」として、暮らしの動線に組み込んでいます。
カバードポーチから、玄関へ。
そのままリビングへ入ることもできます。
ランドリースペースへ直接入ることもできます。
外で遊んで泥だらけになった子どもは、リビングを通らずランドリーへ。そのまま浴室へ向かえます。
晴れた日には、椅子を出して外で過ごす場所になります。
外でもない。
中でもない。
その曖昧な場所をひとつつくることで、延床約34坪というリアルサイズの住まいに、床面積では測れない広がりが生まれました。


02|グラフテクトと、オリジナルのダイニングテーブル。
キッチンは、GRAFTEKTのペニンシュラ型。
色はベトングレーを選びました。
理由はシンプルです。
このキッチンを使ってみたかった。
背面には、深いレトログリーンが印象的なニッタイ工業のベントタイル。
そしてキッチンに合わせるように、ダイニングテーブルをT’s Garage Furnitureでオリジナル製作しました。
完成した家に、既製品の家具を置くのではありません。
家を考えながら、その空間に置きたい家具も一緒に考える。
いま私たちが注文住宅で大切にしている、
「家具から暮らしを考え、暮らしから家をつくる。」
というティーズの家づくり。
その原型は、この頃から少しずつ形になり始めていました。



03|この家のためにつくった、T’s-1。
ソファも、このモデルハウスに置くことを前提に考えました。
T’s-1。
ダイニングテーブル、テレビボード、ベッド、洗面収納、洗面ミラー。
建築と家具を別々に考えるのではなく、ひとつの空間として整えていきました。
照明や雑貨も、当時T’s Garage Furnitureで扱っていたものを中心にまとめています。
高崎市で家具店と工務店の両方を続けてきたティーズだからできる家づくりを、このモデルハウスで少しずつ試し始めていました。

04|コーヒーと、レコード。
テレビ面にはSOLIDOを採用しました。
ヴィンテージのアンプとターンテーブルを組み合わせ、オーディオセットを設置しています。
飾りではありません。
モデルハウスでは、実際にレコードをかけていました。
さらに高崎市のコーヒーショップ「warmth」に依頼し、T’sオリジナルコーヒーを製作。訪れた方にお渡しし、T’s Garage Furnitureでも販売しました。
家を見る。
それだけの展示場にはしたくありませんでした。
コーヒーを飲む。
レコードを聴く。
ソファに座る。
そこで過ごす時間まで含めて、家を考える。
「コーヒーと音楽の似合う家」という名前には、そんな意味を込めています。


05|窓辺に、二人分の居場所を。
リビングの一角に、外を眺めながら使える二人掛けのカウンターを設けました。
天板はダイニングテーブルに合わせて、メラミンで製作しています。
ここを「書斎」と決めてしまうことはしませんでした。
暮らしに合わせて、使い方を変えられる場所として考えています。
子どもたちが並んで宿題をする。
一人はパソコンを広げて仕事をする。
もう一人は、外を眺めながらコーヒーを飲む。
家族が同じ空間にいながら、それぞれ別のことをして過ごせます。
大きな部屋を増やさなくても、窓辺にカウンターを一枚つくるだけで、そこが小さな居場所になります。
カバードポーチと同じように、用途をひとつに決めすぎない「余白」を、家の中にもつくりました。

06|お帰り手洗い。
玄関を入ってすぐ横に、小さな手洗いを設けました。
この家を考えていたのは、コロナ禍の最中です。
帰宅したら、まずここで手を洗ってからリビングへ。
私たちはこの場所を「お帰り手洗い」と呼んでいました。
いまの注文住宅では見かけることも増えた間取りですが、感染症対策だけを考えたものではありません。玄関からLDKへ入るまでの、自然な生活動線として計画しています。

07|喧嘩にならない洗面台。
洗面には、ボウルを二つ並べました。
私たちが付けた名前は、
「喧嘩にならない洗面台。」
忙しい朝。
夫婦や子どもが「早くして」と順番を待つのではなく、二人並んで身支度ができるように。
少し冗談のような名前ですが、考えたのは日常にある小さなストレスです。
デザインや住宅性能だけではなく、毎日の「ちょっと面倒」を間取りや設備で少し減らす。
そんな発想から生まれた洗面です。

08|いつか、間仕切る子ども部屋。
子ども部屋は、5.2帖と5.2帖。
ただし、最初から二部屋には分けませんでした。
子どもが小さいうちは、大きな一部屋として使う。
それぞれの個室が必要になったら、将来壁をつくって二部屋にする。
家族の暮らしは、家が完成した日に完成するわけではありません。
子どもの成長や家族の変化に合わせて、家の使い方も変えられるようにしました。

09|2022 → TODAY
黒のガルバリウムの外壁。
GRAFTEKTのキッチン、ベントタイル、マテリアル柄のクロス、チーク柄のフローリング、ブラウンガラス、SOLIDO。
2022年当時、私たちが「この家で使ってみたい」と思った素材や建材を、積極的に取り入れました。
完成から数年が経ったいまでは、同じような素材やデザインを目にする機会も増えています。
ですから、この家を「新しい素材を使った家」として紹介するつもりはありません。
いま振り返って大切だったと思うのは、別のところです。
キッチンを選ぶ。
家具をつくる。
照明や雑貨を選ぶ。
レコードをかける。
オリジナルのコーヒーまでつくる。
家だけではなく、そこでどんな時間を過ごすのかまで考えて、ひとつの暮らしをつくろうとしていたこと。
この家は、特定のお客様からご依頼を受けて建てた注文住宅ではありません。
約1年間モデルハウスとして公開し、その後ひとつの住まいとして販売することを前提に、ティーズが間取りから素材、家具、暮らし方まで考えてつくった販売型モデルハウスです。
だからこそ、誰か一人の要望に応えるのではなく、
「自分たちなら、どんな暮らしを提案したいか。」
それを一棟の家として、自由に表現することができました。
展示場として、すべてが思いどおりだったわけではありません。
それでも、このモデルハウスとの出会いをきっかけに、ティーズで注文住宅を建ててくださった方がいます。ここで試した家具と建築の関係は、その後の家づくりへとつながっています。
2022年の私たちなりに考えた、
「暮らしから、家をつくる。」
いまのティーズの注文住宅につながる、その原型のような一棟です。

この家のスペック
| 所在地 | 群馬県前橋市江木町 |
|---|---|
| 竣工 | 2022年3月 |
| 用途 | 販売型モデルハウス |
| 構造 | 木造軸組在来工法 |
| 耐震 | 耐震等級3相当 |
| 延床面積 | 約34坪 |
| 間取り | 3LDK |
| 省エネ | ZEH |
| UA値 | 0.56 W/㎡K |
| C値 | 0.5 cm²/㎡ |
| 断熱材 | アクアフォームLITE |
| サッシ | YKK AP APW330(樹脂サッシ・Low-E複層ガラス) |
| 換気 | 第一種熱交換換気 |
| 空調 | Z空調 |
| 外壁 | ガルバリウム鋼板 |
| キッチン | GRAFTEKT/ペニンシュラ・ベトングレー |
| 家具 | T’s Garage Furniture オリジナル |
ティーズオールワークスは、群馬県高崎市の工務店です。
前橋市・高崎市・吉岡町を中心に、家具と暮らしから考える家づくりをしています。