MAEBASHI / EGI-MACHI
家具の場所から暮らしを考え、
窓の向こうに庭をつくる。
群馬県前橋市江木町。
2022年、上毛新聞社が主催する住宅展示場への出展にあたり、ティーズオールワークスは同じ展示場内に二棟の販売型モデルハウスを計画しました。
約100m離れた、二つの敷地。
同じような家を二棟つくるのではなく、それぞれに異なる暮らしの風景を描いています。
コーヒーと音楽の似合う家。では、ブルーやグレー、チークを思わせる色調を。
こちらの家では、ブラックを基調に、オークの色調と異なる質感を重ねました。
ただ、いま振り返って大切だったと思うのは、スタイルの名前ではありません。
ソファをどこに置くか。
ダイニングから何を見るか。
洗濯物をどこにしまうか。
好きなものを、どこに置くか。
家の形だけでなく、そこで人がどう過ごすのかを考える。
現在のティーズの注文住宅にもつながる、家具と暮らしから考えた一棟です。

01|外を見る窓と、外へ出る扉。
この家のLDKには、掃き出し窓がありません。
窓は、大きくするほど熱の出入りも大きくなります。
気密と断熱を考えたとき、床まである大きな開口は弱点になりやすい。それが理由のひとつです。
もうひとつは、外との距離のとり方でした。
庭へ出る扉は、ランドリーに設けています。
LDKの窓は、出入りのためではなく、外を眺めるための窓です。
外へ出る場所と、外を見る場所を分ける。
窓を、大きさではなく役割で考えました。


02|二人で並ぶ、2.6mのカウンター。
ダイニングの隣に、長さ約2.6mのカウンターがあります。
向かいのキッチンと、ほぼ同じ長さです。
宿題をする。パソコンを広げる。本を読む。
何もせず、外を眺める。
「書斎」と名前を付けることはしませんでした。
その日の暮らしで、使い方を決められる場所です。
合わせたのは、細いアイアンの脚を持つカウンターチェア。
いまは生産を終えていますが、公開中、「この椅子はどこのものですか」と何度も聞かれました。
椅子を一脚置くだけで、通り過ぎていた窓辺が、人の居場所に変わる。
家具には、そういう力があります。


03|計画になかった、窓の外の緑。
カウンターに座ると、窓の向こうに緑が広がります。
ただ、この景色は計画したものではありません。
道路の向こうにあるのは、国道の盛土です。
当初は、ウッドデッキと芝生の先に目隠しフェンスを立て、その内側を眺める庭にするつもりでした。
フェンスは、結局立てませんでした。
季節が巡り、盛土に草が伸びる。それが、思いのほかきれいだったのです。
家の景色は、完成した日にすべて決まるわけではありません。
暮らしが始まってから、見つかる風景もあります。



04|家具から考えた、LDKとオリジナルソファ。
間取りを決めてから、家具を置いたのではありません。
ソファの位置。
ダイニングテーブルの大きさ。
テレビボードの納まり。
家具のある風景を先に思い描いて、空間を考えました。
この家のためにつくったソファが、T’s-2です。
ブラックのモケットを張り、アームにはグラスを置けるパーツを重ねました。定番にはならず、いまは製作していません。
置きたい家具がなければ、その空間に合うものをつくる。
建築と家具を分けずに考える姿勢は、この頃から少しずつ形になっていました。
ダイニングテーブル、テレビボード、洗面ミラー、洗面収納、ベッド、サイドテーブル。
照明やラグ、雑貨まで、T’s Garage Furnitureで扱うものを中心に一棟を整えました。
オークの床に、オークの色調の家具。そこへブラックを重ねています。
家具から暮らしを考え、暮らしから家をつくる。
いまティーズが注文住宅で大切にしている考え方の、原型のひとつです。







05|異なる質感を重ねる、黒とオーク。
ブラックを基調にした家です。
けれど、黒いものを集めるだけでは、同じ空気にはなりません。
外壁の黒。リビングの壁。キッチンのマテリアル柄。家具のアイアン。
光を吸い込む黒もあれば、映り込む黒もある。
ざらついた黒もあれば、滑らかな黒もある。
そこへオークの色と、キッチン背面の深いグリーンのタイルを加えました。
当時は「インダストリアル」という言葉も意識していました。
ただ、スタイルを完成させることより、異なる質感をひとつの空間としてどう整えるか。いま振り返ると、この家で試していたのはその組み合わせでした。



06|好きなものを見せる、シューズクローク。
玄関の横に、約2帖のシューズクロークがあります。
ただ、たくさん収納するためだけの場所ではありません。
公開中に並べていたのは、ジョーダンシリーズ、レッドウィングのアイリッシュセッター、エンジニアブーツ。
自分たちが好きな靴です。
好きで選んだものなら、隠さなくていい。
毎日目に入るほうが、きっと楽しい。
収納量では測れない、好きなもののための場所。
家具店を営む工務店として、そんな暮らし方も提案してみたかったのです。



07|洗う、干す、しまうをつなぐ、5帖のランドリー。
1階に、約5帖のランドリー兼脱衣室を設けました。
洗う、干す、しまう。
タオルや下着、Tシャツなど毎日使うものは、乾いたらそのままランドリーの棚へ。
ほかの衣類は2階へ運びます。
ただし、各部屋を回る必要はありません。階段を上がった先に約3帖のファミリークロークを設け、家族の服を一か所にまとめました。
ダイニングからランドリー、脱衣、浴室へ。
ランドリーのテラスドアからは、そのままウッドデッキへ出られます。
部屋の数ではなく、毎日の家事がどこで始まり、どこで終わるか。
その距離を短くすることも、住みやすさだと考えています。



08|ランドリーと一室にした、二人で使える洗面台。
洗面台は、独立した洗面室ではなく、ランドリー兼脱衣室のなかに置いています。
洗う、干す、しまう。そして、身支度する。
ひとつの部屋で終わらせるための配置です。
ボウルは二つ。私たちはこれを「喧嘩にならない洗面台」と呼んでいます。
忙しい朝、誰かが終わるのを待たなくていい。夫婦でも親子でも、並んで使えます。
壁は深いブルー。黒いタイルの床に、木枠のオリジナルミラーを合わせました。
家事のための部屋を、いちばん身支度したくなる場所にしています。
デザイン住宅だから、見た目を整える。
高性能住宅だから、数値を追う。
そのどちらかではなく、毎日の「ちょっと面倒」まで減らせる家でありたいと考えています。




09|暮らしの続きを残した、南側の庭。
北側に、4台分の駐車スペース。
南側には、幅約10m・奥行約1.8mのレッドシダーのウッドデッキと、天然芝を設けました。
当初は、その先を目隠しフェンスで囲い、外からの視線を抑えた、家族のための庭にする計画でした。
けれど、フェンスまでつくって完成形を決めることはしませんでした。
最後は、住む人に委ねています。
デッキに出る。芝生で過ごす。窓辺から外を眺める。
住む人が、自分たちの暮らしに合わせて続きをつくれること。
それも、家の余白だと考えています。


10|2022 → TODAY
この家をつくった頃、私たちは「インダストリアル」というスタイルを強く意識していました。
ブラック、オーク、マテリアル柄、アイアン。当時のティーズが格好いいと思ったものを、素直に詰め込んだ家です。
数年が経ち、ティーズの家づくりも変わりました。
この家を「インダストリアルを極めた家」として紹介するつもりはありません。
大切だったのは、別のところです。
家具の場所から空間を考えたこと。
窓辺に二人分の居場所をつくったこと。
好きな靴を並べる場所をつくったこと。
洗濯物をどこで干し、どこにしまうかまで考えたこと。
庭の完成を、住む人に残したこと。
この家を見たことをきっかけに、ティーズで注文住宅を建ててくださった方もいます。
黒を基調にした空間やキッチンは、その後の吉岡町の家にもつながりました。
展示期間を終えたあと、この家を選んでくださったのは、県外から群馬へ移住されたご家族です。
マンションの暮らしから、4台分の駐車スペースと庭のある住まいへ。決め手には、高気密・高断熱と省エネ性能も挙げていただきました。
展示のためにつくった家は、いま、家族が毎日を過ごす住まいになっています。
スタイルは、時代とともに変わります。
それでも、どこに座るか。何を見るか。何を好きでいるか。
そこから暮らしを考えることは、いまも変わりません。




この家のスペック
| 所在地 | 群馬県前橋市江木町 |
|---|---|
| 竣工 | 2022年5月 |
| 用途 | 販売型モデルハウス |
| 構造 | 木造軸組在来工法 |
| 耐震 | 耐震等級3相当 |
| 延床面積 | 約33坪 |
| 間取り | 3LDK |
| 省エネ性能 | ZEH・BELS取得 |
| UA値 | 0.55 W/㎡K |
| C値 | 0.5 cm²/㎡ |
| 断熱材 | アクアフォームLITE |
| サッシ | YKK AP APW330(樹脂サッシ・Low-E複層ガラス) |
| 換気 | 第一種熱交換換気 |
| 空調 | Z空調 |
| 給湯・調理 | オール電化 |
| 太陽光発電 | 鈴与マタイ 屋根貸し型太陽光発電サービス |
| 外壁 | ニチハ COOL イルミオ ブラック |
| キッチン | GRAFTEKT メリクリオ |
| 床材 | オーク突板フローリング |
| 造作材 | タモ集成材(オークの色調に合わせて使用) |
| 家具 | T’s Garage Furniture オリジナル・セレクト家具 |
ティーズオールワークスは、群馬県高崎市の工務店です。
前橋市・高崎市・吉岡町を中心に、家具と暮らしから考える注文住宅を手がけています。
デザインか、性能か。どちらかを選ぶのではなく、家具、間取り、高気密・高断熱、省エネ、そして住んでからの時間までを、ひとつの暮らしとして考えています。
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